うちの子、首をかしげてるんです!

動物たちとふと目が合った時の首をかしげた姿はとてもかわいいですね。昔のビクターのワンちゃんも蓄音機の音に耳を傾げていました。ところが常にかしげているようでは、異常です。その原因はいくつかあり、それを見極めるためにはいくつかの検査が必要になります。

まずはっきりさせたいのは、痛みや違和感によって首をかしげているのか、平衡や頭部の位置を調節する神経の障害で首をかしげているかです。痛みや違和感によるもので多いのが外耳炎に伴うもので、耳介や外耳道の炎症によって痛みや不快感を持ち首を傾げたり、振ったりします。この場合は、耳鏡と言う道具で外耳道を観察し、耳アカ(耳垢)の検査をして、炎症の原因に細菌や酵母 (マラセチア)、ダニ(耳疥癬)がいないかを見ます。治療は原因や炎症の程度によって異なりますが、耳介や外耳道の消毒や洗浄、抗生物質などによって行います。その他に痛みや違和感を与えるものは稀ですが、首の外傷や腫瘍、頚椎の神経の障害です。これらは、身体検査やレントゲン検査などによって診断します。

これに対し、平衡や頭部の位置を調節する神経の障害で首をかしげている病気は、前庭障害と呼ばれる神経症状で、首をかしげる斜頚以外に眼振、斜視、旋回や回転などのほかの神経症状が認められることが多いです。眼振とは、眼球が左右、上下、時によっては回転運動する事ですがその動きは一方方向が早く他方が遅い動きをします。眼振や斜視は普通の姿勢ではでず、体位を急に変える事によって誘発されるケースもあります。

この前庭系は、運動そのものを開始させるものではなく、運動を修飾し強調するもので、おもに平衡維持や頭部の位置、眼球運動の調節に関係する筋肉を制御します。感覚受容器(感じ取るところ)は、耳の奥の内耳(前庭迷路)にあり、脳への入力は第8脳神経(前庭支)を通って小脳や大脳皮質、脊髄に入ります。そのため、斜頚などの前庭疾患は、耳の近くから 脳の中までの幅広い領域の 障害によって起こります。その障害の場所によって、 治療や予後(治療の見通し) が違って来るため、耳の近くから脳の手前までを末梢 性前庭障害と言い、脳の中の問題を中枢性前庭障害と
言います。

前庭障害とわかった時点で、末梢性か中枢性かを見極めるためいろいろな検査を行います(鑑別診断)。まず、姿勢反応検査(動物が正常にまっすぐ立ったり歩いたりする複雑な反応を見る検査)を行います。この検査は、動物の立った状態で1本づつ足をひっくり返して甲の部分を床につけ反応を見たり(固有受容性位置反応:CP)、体を抱きかかえながら1本足で横跳びをしたり(跳び直り反応)します。これらの姿勢反応がなくなっていると中枢性が疑えます。次ぎに脳神経検査を行います。この検査は、まぶたや瞳孔の大きさを左右較べたり、頭の上の咬筋をみたり、まぶたの近くを軽く触って反応を見たり(眼瞼反射)、目の前から指を近づけたり(威嚇瞬き反応)、光を当てたり(対光反射)してまぶたや瞳孔の反応を見ます。顔面神経の障害(視力があるのに眼瞼反射や威嚇瞬き反射の消失)やホーナ-症候群(交感神経の異常:障害を受けた側の瞳孔収縮、眼球陥没、眼瞼下垂、瞬膜突出)だけなら末梢性が、その他の異常があるなら中枢性が疑えます。末梢性が疑える場合は、外耳道の検査や鼓膜の奥の鼓室を見るためレントゲン検査をしたりします。中枢性が疑える場合は、X線CT検査やMRI検査をする必要が出てくるかもしれません。また、炎症や化膿の評価や他の臓器の病気の有無を診るため血液検査をします。これらの検査を踏まえ治療を決定します。

動物たちの健康を維持するためには、日頃そのしぐさや行動を良く見てあげることが大切です。

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