腰が痛い!立てない!

ワンちゃんが急に腰を痛がったり、立てなくなったりすることがあります。交通事故や高い所から落ちたりしていなければ、いくつかの病気が考えられるのですぐに診察を受けて下さい。まず診る事は「痛いのは本当に腰か?お腹の中ではないか?」と言うことです。急性腎炎や膵炎では腰が痛いように見えたりしますし、前立腺の病気で痛みと歩行異常が見られる事があります。次ぎに「立てないのは、痛みのせいなのか?骨折は無いか?それとも、神経や筋肉の異常で立つことができないのか?」を診ます。飼主さんに経過を聞き、身体検査をした後、これらを診断するため、必要に応じてX線検査、血液検査、神経学的検査を行います。

神経や筋肉の異常で立つことができないと解ったら、問題の場所を決めなければなりません。神経学的検査によって4つの部分に分けることができます。①首の部分の脊髄神経の障害、②首の根元から肩にかけての脊髄神経の障害または前足の神経や筋肉の障害、③胸から腰にかけての脊髄神経の障害、④腰の後ろからお尻にかけての脊髄神経の障害または後ろ足の神経や筋肉の障害の4つです。原因は椎間板ヘルニア、脊髄の腫瘍、脊椎の骨折、前足や後ろ足の末梢神経の病気および筋肉の病気です。ここでは、急に腰が痛くなって、立てない病気=腰部の椎間板ヘルニアについてはなします。

腰部の椎間板ヘルニアは、比較的良くみられる腰の脊髄神経の病気で、背中に並んでいる背骨(胸椎や腰椎)の間のクッション的な存在である椎間板が背骨の神経(脊髄神経)の方に飛び出てしまう病気です。ワンちゃんの種類によって2つに分けられます。1つは、ダックスフンド、ペキニーズ、ビーグルなど軟骨異栄養犬種と呼ばれる種類に起こるタイプでハンセンⅠ型と呼ばれ、若い時期に椎間板の軟骨様変性が見られやがて石灰化して、急に上に飛び出て脊髄神経を傷つけます(椎間板逸脱症)。2~7歳齢のワンチャンにみられ、ピークは4~5歳齢です。これに対し、その他のワンちゃんで起こる病気は、椎間板がゆっくり線維化を起こしそれが上方に出て脊髄神経の障害を起こし(椎間板突出症)、ハンセンⅡ型と呼ばれます。この症状は、8~10歳齢頃に発現します。

治療は、症状の重さやタイプによって違います。「初めて起きたのか?再発なのか?」、「痛みだけなのか?歩行異常もあるのか?」、「完全に後ろ足が麻痺しているかどうか?」、「痛覚はあるかどうか?」などを診ます。特に最後の「痛覚」は、足先をつまんで足を引っ込めるか(屈曲反射)ではなく、脳で痛みを感じ嫌がったりするかをみるもので、その程度も、皮膚をつまんで痛がるか(浅部痛覚)、骨をつままないと痛がらないか(深部痛覚)を診ます。これらの情報から、内科的治療(お薬による治療)か、外科的治療(手術による治療)を選びます。

しかし、深部痛覚が48時間以上無い状態でほっとかれた場合は、どの治療でも上手く行かないので、なるべく早く診察を受ける必要があります。

内科治療は、症状が軽い軟骨異栄養犬種以外のワンちゃんの場合に選択されます。入院をして運動制限をして、ステロイドのお注射を1日何回もします。この薬は胃を荒らしたりする副作用があるので、それらに対する治療も必要になります。数回の治療で少しずつ症状が改善する子もいますが、この治療は飛び出した椎間板を無くすのではなく、腫れた神経を元のサイズにもどし障害を抑えるだけなので、再発する危険性があります。

外科的な治療は、症状の比較的重い子に行われます。手術を行なうにはくわしい場所を知る必要があるので、麻酔をかけ脊髄腔に薬(造影剤)を入れてレントゲンを取ります。第12-13胸椎と第13胸椎-第1腰椎の部分が最も多く発生する場所です。場所が決まったら手術を行いますが、この手術は特殊で多少危険も伴う事を理解しなければなりません。

この様に椎間板ヘルニアは、しっかり診断し治療を選択してあげることが必要となりますが、1番大切な事は、早めに症状を見つけてすぐに診察を受ける事です。かわいいワンちゃんのために家や散歩中の歩き方にも注意を払ってあげましょう。

<戻る>