かわいい顔に、こわ~い病気!(水頭症)

「うちの犬、この頃、歩き方が変?」小型犬で1歳前後なのに、部屋の壁に頭をぶつけたまま、もがいたり、散歩に行くと、からだが右に傾いて、右の方ばかりぐるぐると回りだすような症状が見られた時に、「まだぼけるような年じゃないのにな?」と思われるかもしれません。また、突然、痙攣(けいれん)したり、じっとしたまま、動かなくなったり…。そんな時、脳の中に、なにか異常がある場合も少なくありません。

息をしたり、食事をしたり、歩いたり、見たり、聞いたり、臭いをかいだり、暑さ、寒さを感じたり、物事を憶えたり、考えたりする事、これらの動物の生命維持と心身の調節は、「脳」の仕事です。その重要な脳をまもるため、脳は頭蓋骨と三層の髄膜(硬膜、クモ膜、軟膜)におおわれています。脳の中(大脳皮質の内側)には、脳室系と呼ばれる部屋(左右にある二つの側脳室、第三および第四脳室)があり、その部屋は脳脊髄液で満たされています。その液体は側脳室、第三脳室、第四脳室、クモ膜下腔へ流れ、最終的に硬膜静脈洞に突出するクモ膜顆粒から静脈洞内に排出されます。しかし、脳を浸す髄液の量が増えたり、流れがどこかで妨げられたりすると脳圧が上がり、脳(神経細胞)を圧迫します。これが、水頭症です。症状だけを見ると、細菌やウィルスによる髄膜脳炎や脳の腫瘍(しゅよう)(ガンなど)と区別がつきづらく、いろんな障害・症状がおこってきます。

人の場合なら、「頭痛がする」、「めまいがする」、「吐き気がする」など、初期症状を訴えて、早期発見・早期治療にむすびつくことが多いけれども、ワンちゃんやねこちゃんは、黙って耐えていることも多く、飼い主さんは「今日はすこし元気がないわ」という程度にしかわからないかもしれません。脳内の病気が進行し、歩行困難や旋回、痙攣発作、意識障害など、重い症状が現れてはじめて、来院するケースがほとんどです。このような脳の障害をおこす水頭症には2種類あって、(1)脳室内に脳脊髄液が異常に貯留し、その結果脳室の拡張を生じ、脳組織が圧迫されて様々な障害を生じる内水頭症と、(2)くも膜下腔に脳脊髄液が貯留して同様な障害を生じる外水頭症があります。チワワ、ヨーキー、ポメラニアン、トイプードルなどの超小型犬、ボストンテリア、ペキニーズなどの短頭種に多く発生する傾向にあり、外見の特徴としては、とても小さい犬やおでこが大きくぬいぐるみのようにかわいい顔をしていることがあります。具体的な症状としては意識の低下、活発さがなくなったり、てんかん様発作、知能の低下、異常な行動(何もないのにハエを追うようなしぐさをする、突然鳴き出すなど)、五感が衰える知覚障害がみられたりします。病気の原因は、髄液の貯まっている量ではなく、それによる「脳圧」の高まりです。そのため、興奮や頭部の打撲によって一過性に脳圧が上がることが引き金になって発症する事も多いです。だから、治療方法はいかに脳圧を下げるかで、通常は浸透圧利尿剤を使い、余分な髄液を静脈に吸収させ症状は改善します。しかし進行性で髄液がどんどんたまる場合は、脳圧を一定に保ちながら余分な髄液を排出するために、弁の付いた管(くだ)を脳室からお腹に通すバイパス手術をしなければなりません。

おおむら動物病院 健康相談 イラストまた水頭症が進むと、脳細胞に水分が浸みこんで機能障害を起こす「脳浮腫(ふしゅ)(脳のむくみ)」という状態になるため、副腎皮質ホルモンを投与します。また、「てんかん様発作」症状の動物には抗てんかん剤を投与するなど、さまざまな症状への治療を併用することになります。

この水頭症は、なりやすい犬種と特徴的なかわいい顔があり、症状は比較的若い時期に見られます。かわいい小型犬を飼っている方は、興奮や頭部外傷によって発症の危険性が高まりますので、要注意です。「あれ?」と思ったらすぐ来院してください。

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