乳腺腫瘍は防げますか?

腫瘍とは・・・・

いわゆる「しこり」「はれもの」の中で、炎症や過形成ではなくて、本来、正常な細胞が、何らかの要因によって、活発な成長、増殖をおこなってしまう異常な細胞の集団を腫瘍といいます。普通は、体の防御システムが働いて、異常な細胞は大きくなる前に排除されます。しかし、そのような防御システムがうまく働かない場合、その異常な細胞の集団はどんどん大きくなっていきます。そのなかで、増殖がゆるやかで、体の他の部位に転移しないものを「良性腫瘍」といい、成長、増殖に歯止めがかからず、体の他の部位に転移して、ついには命を奪いかねない悪質なものを「悪性腫瘍」(がん)といいます。そのなかで比較的多く見られるものが、乳腺細胞の異常な成長、増殖で発生する「乳腺腫瘍」です。


乳腺のしこりがあったら・・・・

おおむら動物病院 健康相談 イラスト乳腺腫瘍とは、雌の乳房またはその付近の皮下に様々な大きさの「しこり」が発生する病気です。腫瘍の腫大化や複数の乳房への転移によって気づくのが普通で、初期には痛みなどはほとんど認められません。ただし、腫瘍が自潰して化膿すると悪臭を放ち、また他の臓器(特に肺が多い)への転移は死を招くことにもなります。

乳腺腫瘍は、わんちゃんにもねこちゃんにも発生しますが、発生頻度や悪性の割合など少し違いがあります。わんちゃんの乳腺腫瘍は、メス犬の全腫瘍の約52%といわれるほどかかりやすい病気です。発生年齢は10歳から11歳ぐらいが多く、5歳以下での発生はまれです。また、メス犬のみ発生すると思われがちですが、オス犬にも発生することもあります。乳腺腫瘍になりやすい犬種としてはマルチーズ、ヨークシャーテリア、プードル、ポメラニアン、シーズーといった小型犬に多く見られます。

乳腺腫の予防は可能か?

わんちゃんの乳腺腫瘍はメス犬10万頭につき約200頭の割合で発生し、とくに女性ホルモン(特にエストロジェン)との関連性がきわめて高いと考えられていて、発情がきた回数と避妊手術をする時期によって乳腺腫瘍の発生率が違うといわれています。具体的には、初発情前に避妊手術を受けたメス犬が乳腺腫瘍になる危険性は、避妊手術を受けていないメス犬の約0.5%、また、初発情と2回目の発情のあいだに避妊手術を受けた場合は約8%、発情2回目と3回目のあいだに避妊手術を受けた場合は約26%に減ります。早め(特に最初の発情の前)に避妊手術をすることによって、乳腺腫瘍を避けることができます。

おおむら動物病院 健康相談 イラストねこちゃんの乳腺腫瘍は約10万頭につき約25頭の割合で発生します。発生年齢は10歳から11歳くらいが多いです。また、99%は未避妊雌に発生します。ねこちゃんの場合は避妊手術を行なう月齢によって乳腺腫瘍の発生率が違うと言われています。具体的には、生後6ヵ月以前に避妊手術を受けたメス猫が乳腺腫瘍になる危険性は、避妊手術を受けていないメス猫の約9%、7から12ヵ月までに避妊手術を受けた場合は約14%に減りますが、13から24ヵ月までに避妊手術を受けた場合は約89%、24ヵ月を過ぎると100%(避妊手術をしても変わらない)となって未避妊雌とあまり変わらなくなります。

人間では、出産経験がある方が乳腺がんになる確率は低くなりますが、それは妊娠中にはエストロジェンの分泌が少なくなるからです。避妊手術を行なわない人間にとってはもっともですが、だからといって乳腺癌の予防のために妊娠する人はいません。わんちゃんねこちゃんも同じです。「子供がほしいかどうか?」で決めてあげてください。わんちゃんねこちゃんの出産経験と乳腺癌の研究はありませんが、避妊手術によって完全にエストロジェンの分泌はなくなりますので、理論的には乳腺癌の発生もより防げると思います。

乳腺腫の治療は・・・・

腫瘍が発生してしまった場合には手術による切除がすすめられます。もちろん、麻酔前検査として身体検査や血液検査をし、さらに転移の有無をみるためX線検査も行います。そして切除した腫瘍は必ず病理検査で悪性であるか良性であるかを診断し、その後の処置を決める必要があります。わんちゃんの場合、良性、悪性の割合は50%ずつです。

ねこちゃんの場合は、わんちゃんと違い90%以上は悪性です。ですからねこちゃんの乳腺腫瘍では、手術によって徹底的な乳腺の切除が必要です。この手術では、腫瘍になっている側の4つのすべての乳腺と腋の下のリンパ節、そして鼠径部 (足のつけ根) のリンパ節を切除します。右と左の両方の乳腺が腫瘍になっている場合は、4週間の間隔をあけて右側と左側をそれぞれ2回、徹底的に乳腺を切除する必要があります。手術後は、傷口は腋の下から外陰部にまで達します。その部分に体液がたまるのを防止するため、小さなゴムの管が挿入される場合もあります。この管は手術の4~5日後に外されることが多いです。

ここまで書いてきたように、もし将来子供を生ませる予定がないなら、早ければ初発情前、遅くとも生後1、2年のあいだに避妊手術を受けることが、この乳腺腫瘍の発生予防に役立つとともにほかの病気(子宮蓄膿症など)の予防にもつながります。そして、乳腺の部分にしこりが見つかったら様子を見ないですぐに動物病院に連れて行くことが大切です。

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